今回は、眞邊明人さんが書かれた「もしも徳川家康が総理大臣になったら」をご紹介します。
タイトルからしてキャッチーですよね。タイトル通り、徳川家康が現代の総理事大臣となります。AIと最新ホログラム技術を駆使してまるで本物が蘇ったように!他にも織田信長や豊臣秀吉、坂本龍馬などが内閣の要職に着任しています。
コロナ禍に対して偉人たちで構築された内閣が、どのように対処していくかという胸熱な小説です。現実では緊急事態宣言が何度も発令されてきましたが、歴史上の施策が実施されていたらどうなっていたか?
歴史小説が好きな方、もしも〇〇だったらという話が好きな方におすすめの小説です。
本の概要
本書は、第一部と第二部に分かれています。タイトル色の強い内容は第一部、ミステリー要素が入ってきてオリジナル色が強いのが第二部といった印象です。
第一部
偉人たちのキャラクター・人間関係を色濃く表現しながら、コロナ禍への施策を打ち立てていきます。
坂本龍馬(官房長官)と豊臣秀吉(財務大臣)の人たらしな性格
徳川綱吉(厚生労働大臣)と徳川吉宗(農林水産大臣)の、徳川家康(総理大臣)に対する畏敬の念
同じ時代に生きることのない偉人同士が、人間関係を築き上げているのが面白かったです。
別書ですが、「放課後のカリスマ」というタイトルで『世界的に有名な偉人たちのクローンが学園生活を送る』話の漫画があります。意外と日本史で似たような話は読んだことがないので、『違う時代の偉人が、現代に集まって活躍する』といったストーリーは本書が初めてかもしれません(知らないだけかもしれませんが…)。
第二部
若干のミステリー要素が入ってきます。
第一部では偉人のキャラクターが際立ちましたが、第二部では犯人探しをするような展開が出てきます。偉人たちよりも現代の人も頑張っている話です(あまり書くとネタバレになるため省略)。
心に響いた言葉3選
本書を読んで、「歴史から学ぶというのはこういうことかぁ」と思ったフレーズをネタバレにならないよう3つ選んでみました。
リーダーとしての心構え(豊臣秀吉)
将たるものの仕事は決めることじゃ。決めたことは何があってもやる。そういう将の下には、それを成し遂げる者が集まるものじゃ。あとは将はその者たちを信じて任せる
眞邊明人著「もしも徳川家康が総理大臣になったら」
財務大臣の豊臣秀吉が、大胆な施策を決めた時のセリフです。
上司が方針を決めて、部下を信じて任せる。かっこよくありませんか???
残念ながら現実では、上司が「(部下のあなたを)信じているから、この仕事任せた!」と言って仕事を丸投げしてくることもあると思います。全ての会社がそうとは言い切れませんが、私には経験があります。
「本書と上記の例でいう『信じて任せる』の間でどこに違いがあるのかな?」と考えてみると、将たるものの覚悟の部分ではないでしょうか。
本書の「将たるものの仕事は決めることじゃ。決めたことは何があってもやる。」の箇所から、決めた方針をに対して貫徹する強い意志を感じます。
しかし丸投げしてくる上司には、それがありません。きっと、部下が上司に仕事の方向性について質問してもあやふやだと思います。
決めた方針に対する責任よりも、上司も他から頼まれた仕事をなんとか終わらせて欲しいという気持ちが強いと思うからです。
自身が部下を多く持つようなリーダーとなったときには、それなりの覚悟を持って方針を決めて部下を信じる仕事の振り方をしたいと思いました。
コロナ禍における経済優先論か命優先論かについて(徳川家康)
政とは、良いことと、悪いこととの間を取り持つことじゃ
眞邊明人著「もしも徳川家康が総理大臣になったら」
コロナ禍において「命を守ること」か「経済を優先させること」のどちらかという議論が盛り上がっている時期がありました。
「命」を優先しすぎると「経済」が回らなり生活が立ち行かなくなる。
「経済」を優先しすぎると「命」の危機が高まる。
「命」は当然大事なものですが、生活基盤である「経済」もないがしろにすべきことではありません。
(実は昨年コロナ失業しました……いまは新しい職場で働けていますが……)
本書でも「経済優先論か命優先論か」という議論があり、それに対して徳川家康は
どちらもほどほどに良く、ほどほどに不自由になる
眞邊明人著「もしも徳川家康が総理大臣になったら」
と発言しています。
私のようにコロナで失業した人にとっては、経済優先論を重要と考えるかもしれません。
コロナによって業績に多大な影響を被った業界に勤めている人もなかなか「経済よりも命」と言い切るのは難しいのではないでしょうか。
しかし本書から、どちらかを優先するのではなく、良いことも悪いこともほどほどにという姿勢を学びました。
また本書では政で語られていますが、決めつけすぎるのがよくないということは実生活でも当てはまるのではないでしょうか?
- 恋人同士での喧嘩でも片方が悪いというわけではない。互いに良い箇所、悪い箇所がほどほどにある。
- 部署間での対立はどちらの言い分が絶対的に正しいというわけではない。部署ごとに会社への貢献の仕方が違うだけで、互いにすり合わせるべきところがある。
立場の違いによる意見において、片方が絶対的に正しかったり優先度を高くすべきだったりするわけではないということを学びました。
自由と不自由について(坂本龍馬)
おまんの自由の裏側には不自由なもんがおるということを肝に銘じることじゃ。そう思えば、自分の不自由を受け入れることができるきに。皆が少しずつ不自由を受け入れる必要があるぜよ。
眞邊明人著「もしも徳川家康が総理大臣になったら」
先程の「ほど良くほど悪く」とニュアンスが似ていますが、自由に対する受け止め方です。
本書では経営者と労働者の関係で説明がされていますが、先程の「ほど良くほど悪く」と同じように実生活に当てはまると言えるでしょう。
例えば、生活でいえば同居人がいるか否かです。同居人がいる方は、一緒に住んでいる家族と生活スタイルを合わせなければならないことも多々あると思います。食事の時間、入浴するタイミング、テレビのチャンネル権など自身の思うようにならない「不自由さ」があります。
そのような環境下、自分のペースで生活したらどうでしょうか。自分にとって「自由」に過ごしている分、同居している家族にとっては生活のタイミングをずらされ「不自由」の度合いが増していくはずです。
「自由」が全くないのも問題ですが、「自由」すぎて周囲の人間を「不自由」に追い込むのは健全とは言えません。周囲の「不自由」を軽減するために、多少自身の「自由」が損なわれても「不自由」を受け入れることの重要さを学びました。
まとめ
コロナ禍において、過去の偉人たちが内閣府として蘇ったらどうなるか?というストーリーが主軸となっています。
ですが、歴史小説としての面白さだけでなく、生活や仕事にも当てはまる気づきや学びを得ることができます。
とても読みやすくて、一気読みしやすい本なのでぜひ興味がある方はお手に取ってみてください!
コメント